宅建業法

手付・保全措置・損害賠償額の予定

基準日 2026年4月1日。更新 2026年10月28日。 論点ノート一覧

結論

宅建業者が自ら売主となる宅地・建物の売買では、手付の額、手付による解除、損害賠償額の予定、手付金等の保全が別の条文です。割合が近くても、見ている金銭は同じではありません。

契約の締結に際して受領できる手付は、代金の十分の二までです。受領した手付は性質を問わず、相手方が履行に着手するまでは、買主は放棄して、売主である業者はその倍額を現実に提供して解除できます。

債務不履行を理由とする解除に伴う損害賠償の予定と違約金は、合算して代金の十分の二を超える定めができません。超えた特約は、その超える部分だけが無効です。

手付金等を保全せずに受け取れるかは、工事完了前かそれ以外かで分かれます。登記の例外を除き、割合と千万円の両方が必要です。完了前は百分の五、それ以外は十分の一。手段も違います。

宅建業者相互の取引には、38条、39条、41条、41条の2は適用されません。他人の物件を売れるかの例外と、クーリング・オフの場所や期間は、別のノートで見ます。

要件・数字

  • 38条、39条、41条、41条の2が適用されるのは、宅建業者が自ら売主となる宅地または建物の売買。媒介だけの取引には適用されない
  • 宅建業者相互の取引には、78条2項により37条の2から43条までを適用しない。38条、39条、41条、41条の2もこの範囲に入る
  • 損害賠償の額の予定と違約金は合算する。合算額が代金の十分の二を超える定めをしてはならない。反する特約は、十分の二を超える部分について無効
  • 契約の締結に際して、代金の十分の二を超える額の手付は受領できない。買主の承諾で受けられるとは、39条1項には書かれていない
  • 受領した手付がいかなる性質のものであっても、買主はその手付を放棄し、売主である宅建業者はその倍額を現実に提供して、契約を解除できる
  • 手付による解除は、その相手方が契約の履行に着手した後はできない
  • 39条2項に反する特約で、買主に不利なものは無効
  • 手付金等とは、契約の締結の日以後、その宅地または建物の引渡し前に支払われる金銭。代金として授受されるものと、手付その他の名義で代金に充当されるもの
  • 保全の要否を見る額は、受領しようとする手付金等に、既に受領した手付金等があるときはその額を加えた額
  • 工事完了前の、その工事に係る売買では、受領より前に、保証委託契約を締結して保証を約する書面を買主へ交付するか、保証保険契約を締結して保険証券またはこれに代わる書面を買主へ交付する
  • 工事完了前に保全が要らないのは、買主への所有権移転の登記がされたとき、買主が所有権の登記をしたとき、または手付金等の額が代金の百分の五以下であり、かつ千万円以下のとき
  • 工事完了前以外の自ら売主の売買では、受領より前に、保証委託契約を締結して保証を約する書面を買主へ交付するか、保証保険契約を締結して保険証券またはこれに代わる書面を買主へ交付するか、手付金等寄託契約と質権設定契約の両方を講じて寄託契約を証する書面と質権設定契約を証する書面をいずれも買主へ交付する。質権の書面だけでは足りない
  • 工事完了前以外で保全が要らない金額は、代金の十分の一以下であり、かつ千万円以下。千万円は、未完成と同じく施行令3条の5の額
  • 寄託方式の質権は、質権設定契約を証する書面の交付に加え、確定日付のある証書で指定保管機関に通知する。寄託契約を証する書面の交付は、この通知とは別に必要
  • 保証を約する書面、保険証券に代わる書面、寄託契約を証する書面、質権設定契約を証する書面の交付は、買主の承諾を得て、政令で定めるところにより、省令で定める電磁的方法で講じたときは、その交付をしたものとみなす
  • 手付金等寄託契約と質権設定契約を使うとき、既に自ら受領した手付金等があるときは、買主が支払う前に、指定保管機関が保管していない分に相当する金銭を指定保管機関へ交付する
  • 保全の措置を講じないときは、買主は手付金等を支払わないことができる。寄託と質権の措置を使うのに、既に受領した分を指定保管機関へ交付しないときも、支払わないことができる
  • 保証委託の保証債務は、少なくとも受領した手付金等の返還債務の全部を保証し、少なくとも引渡しまでに生じたものを保証の対象とする
  • 保証保険の保険金額は、受領しようとする手付金等の額に既受領分を加えた額に相当する金額。保険期間は、少なくとも保証保険契約が成立した時から引渡しまで

よくあるひっかけ

  • 割合を一つにまとめる

    十分の二なのは、損害賠償の予定と違約金の合算と、締結時に受領できる手付です。保全なしで受け取れる割合は別に、工事完了前が百分の五、それ以外が十分の一です。千万円以下であることも、割合とあわせて必要です。

  • 超えたら定めが全部無効

    38条に反する特約は、代金の十分の二を超える部分について無効です。予定や違約金の定め全体が無効になるとは書かれていません。

  • 手付の超過分も無効

    39条1項は、代金の十分の二を超える額の手付を受領することができない、と定めます。38条2項のような「超える部分は無効」とは書かれていません。

  • 売主は手付を返せば解除できる

    売主である宅建業者は、手付の倍額を現実に提供して解除します。買主が解除するときは、手付を放棄します。

  • 自分が着手すると解除できない

    手付による解除ができなくなるのは、その相手方が契約の履行に着手した後です。自分が着手したことだけでは、この期限には当たりません。

  • 未完成でも寄託と質権で足りる

    工事完了前の保全は、保証委託契約または保証保険契約と、それぞれの書面の買主への交付です。寄託契約と質権設定契約は、工事完了前以外について41条の2が定めています。寄託方式は、寄託を証する書面と質権の書面の両方が必要です。

  • 契約を結べば書面は後でよい

    受領より前に、保証委託は保証を約する書面、保証保険は保険証券またはこれに代わる書面を買主へ交付する。寄託方式は、寄託契約を証する書面と質権の書面の両方が必要で、質権の書面だけでは足りない。

  • 割合だけ見れば保全は不要

    金額の例外は、割合以下であることと、千万円以下であることの両方です。既に受領した手付金等があるときは、その額を加えて見ます。十分の一以下でも、千万円を超えれば保全が必要です。

  • 保全をすれば手付は2割を超える

    39条1項の受領制限に、保全措置を講じたときの例外はありません。保全の要否は41条と41条の2、受領できる手付の額は39条です。

  • 登記をする予定なら保全不要

    保全が要らなくなるのは、買主への所有権移転の登記がされたとき、または買主が所有権の登記をしたときです。登記をする予定では足りません。

  • 手付解除は告げられてから8日

    手付による解除の期限は、相手方の履行着手です。告げられた日から8日、申込みの場所で分かれるのはクーリング・オフです。

比較

手付・損害予定・保全
観点損害賠償の予定手付手付金等の保全
主な条文38条39条41条、41条の2
見る金銭債務不履行による解除に伴う損害予定と違約金締結時に受領する手付契約の日以後、引渡し前の手付金等
線引き合算で代金の十分の二。超える部分は無効十分の二を超える額は受領できない保全なしなら、完了前は百分の五以下かつ千万円以下。それ以外は十分の一以下かつ千万円以下
解除と手段合算するのは損害予定と違約金買主は放棄、業者は倍額を現実に提供完了前は保証委託か保証保険と各書面。それ以外は同じか、寄託と質権の両方と各書面。交付は受領前

時系列

  1. 保全が要るかを見る

    買主への所有権移転の登記がされたとき、または買主が所有権の登記をしたときは要らない。金額では、受領しようとする額に既受領分を加え、完了前は百分の五以下かつ千万円以下、それ以外は十分の一以下かつ千万円以下のとき要らない。

  2. 書面を交付する

    受領より前に、保証委託なら保証を約する書面、保証保険なら保険証券またはこれに代わる書面を買主へ交付する。工事完了前以外で寄託方式を使うときは、寄託契約を証する書面と質権の書面の両方を交付する。質権の書面だけでは足りない。

  3. それから受領する

    契約と書面交付を含む措置の後でなければ受領できない。買主の承諾があれば、保証を約する書面、保険証券に代わる書面、寄託を証する書面、質権の書面は、政令で定めるところにより省令の電磁的方法で交付に代えられる。

手付金等を受け取るまで

暗記カード

カードをタップすると裏を表示します。

損害賠償の予定と違約金の上限は タップで裏を見る

合算して代金の十分の二。超える部分だけ無効。合算の対象は損害予定と違約金。

自ら売主が締結時に受領できる手付は タップで裏を見る

代金の十分の二まで。保全措置を講じても、39条1項の上限は広がらない。

売主である業者の手付解除に要るのは タップで裏を見る

手付の倍額の現実の提供。相手方が履行に着手する前に限る。

工事完了前、保全なしで受領できる額は タップで裏を見る

代金の百分の五以下、かつ千万円以下。買主への所有権移転の登記等がされたときも保全は要らない。

工事完了前以外の保全措置は何か タップで裏を見る

保証委託または保証保険と各書面の交付。あるいは寄託と質権の両方に、寄託を証する書面と質権の書面。質権の書面だけでは足りない。

手付金等に入る金銭は何か タップで裏を見る

契約の日以後、引渡し前に払う、代金として授受される金銭と、手付その他の名義で代金に充当される金銭。

この論点を書いて確かめる

読んだ内容を、誤り肢の理由として書いて確かめます。

基準日時点の整理です(宅建業法38条、宅建業法39条、宅建業法41条、宅建業法41条の2、宅建業法78条2項、宅建業法施行令3条の5)。条文の写しではありません。