権利関係

物権変動と対抗要件

基準日 2026年4月1日。更新 2026年10月9日。 論点ノート一覧

結論

不動産の売買でも、当事者の間の所有権は、原則として意思表示だけで移ります。登記が終わるまで売主に残る、という覚え方は当事者間の話としては誤りです。

第三者に「自分が所有者だ」と主張するには、別に登記が必要です。契約が先であることや、代金を支払ったことは、登記の代わりになりません。

同じ不動産を二人に売ったときは、どちらが先に契約したかではなく、登記を備えたかで第三者への対抗が決まります。

要件・数字

  • 物権の設定と移転は、当事者の意思表示だけで効力を生じる。登記は当事者間の効力の条件ではない
  • 不動産の物権の得喪や変更は、登記をしなければ第三者に対抗できない
  • 売買の相手方は、ここでいう第三者ではない。対抗が問題になるのは、契約の外にいる第三者との間
  • 第三者は、当事者とその包括承継人以外で、登記がないことを主張する正当な利益がある者をいう(大審院明治41年12月15日)
  • 契約が先であることや、代金を支払ったことは、登記に代わる対抗の手段ではない
  • 二重に譲渡したときは、先に契約しただけでは第三者に対抗できない
  • 判例は、背信的悪意者をこの第三者から外す。条文にその語は書かれていない

よくあるひっかけ

  • 登記が終わるまで所有権は売主のまま

    当事者の間では、意思表示だけで所有権が移ります。登記は、第三者に対抗するための要件です。

  • 代金を全部払えば登記がなくても第三者に主張できる

    代金の支払いは対抗要件ではありません。第三者への主張には登記が必要です。

  • 先に契約した人が勝つ

    二重譲渡では、契約の先後だけでは対抗できません。登記を備えたかを見ます。

  • 背信的悪意者は条文に書いてある

    登記がなければ対抗できない相手は第三者です。背信的悪意者をそこから外すのは判例で、条文の文言そのものではありません。

  • 契約の相手方にも登記がないと所有権を主張できない

    売買の相手方は、対抗要件の話でいう第三者には当たりません。相手方との間では、意思表示による移転が問題になります。

時系列

  1. 契約が成立する

    特約がなければ、当事者の間ではこの時点で所有権が移る。登記はまだなくても、当事者間の移転は起きている。

  2. 代金を支払う

    支払いの有無は、第三者への対抗要件にはならない。払ったから登記の代わりになる、ではない。

  3. 登記を備える

    不動産の物権変動を第三者に対抗するための要件は登記。契約の相手方に対する話とは分けて見る。

  4. 別の人へ重ねて売られる

    先に契約しただけでは、もう一方の買主に対抗できない。登記を備えた側が第三者に対抗できる。背信的悪意者は、判例上この第三者から外れる。

契約・代金・登記の順

暗記カード

カードをタップすると裏を表示します。

当事者の間で所有権が移るのはいつか タップで裏を見る

原則は契約の意思表示のとき。登記の完了を待たない。

第三者に対抗するために必要なものは何か タップで裏を見る

登記。契約が先であることや代金の支払いでは代わりにならない。

二重譲渡で先に見るのは契約の先後か、登記か タップで裏を見る

登記。先に契約しただけでは、もう一方に対抗できない。

背信的悪意者はどこに書いてあるか タップで裏を見る

条文の文言ではない。判例が、177条の第三者から外している。

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基準日時点の整理です(民法176条、民法177条、大審院明治41年12月15日)。条文の写しではありません。